水虫の薬と副作用
水虫の薬の開発は、副作用との戦いでした。水虫の薬は水虫の構造の関係でとても副作用が出やすいのです。完治まで時間がかかるのに副作用が出る可能性も高く、完治まで薬を服用し続けることはとても困難なことでした。
水虫の薬に副作用が出やすい理由
水虫は真菌というカビの一種が原因でおこる病気です。
実は、真菌は人間の細胞ととても似た構造になっています。これが、副作用の少ない水虫薬の開発を困難にしてきました。
水虫の原因菌、真菌を攻撃する薬は、人間の細胞も攻撃してしまうからです。水虫の薬が人間の細胞を攻撃してしまい、頭痛や腹痛、肝機能障害などの副作用が高い確率で出てしまうのです。
しかも、水虫に治療はとても長い期間かかります。
真菌の増殖を抑え込み、真菌に侵されていない健康な皮膚に完全に置き換わるまで治療を続けなければ、すぐに再発してしまいます。
足の裏の皮膚では、最短でも6か月かかります。
その間、副作用の問題を気にせず薬を使い続けることができる人は少なかったのです。とくに、内服薬では、完治まで薬を使い続けられるのは3人に1人だといわれていました。
新しい薬と副作用
人間の細胞を攻撃せず、真菌だけを攻撃する薬が開発されたのはごく最近の事です。新しい薬はイトラコナゾール(イトリゾール)やテルビナフィン(ラミシール)と言われる薬です。
これらの薬はエルゴステロールの合成を妨げます。エルゴステロールは真菌の細胞膜を合成する成分です。エルゴステロールの合成を妨げられた真菌の細胞膜は裂けてしまい、真菌は死滅してしまうのです。
エルゴステロールは真菌の細胞膜には存在しますが、人間の細胞膜には存在しません。だから、薬の成分が人間の細胞を壊すことは無いのです。
しかも、薬の成分は角質層のケラチンと結びつきやすく、ケラチンの中に長くとどまります。
ケラチンはたんぱく質の一種で真菌のえさになります。
真菌を死滅させる効果の高い成分が真菌のえさの中に長くとどまることにより、しっかりとした効果が長く続くのです。
ただし、新しい薬にも副作用はあります。
イトラコナゾール(イトリゾール)は他の薬を合わせて飲むと副作用があらわれる危険性が高くなります。テルビナフィン(ラミシール)は味覚障害を起こす可能性があります。
どちらの薬も肝機能障害を起こす可能性があるので、1か月に1度は肝機能検査を行う必要があります。